婚前契約書、どこで作る?|再婚を前にした編集者が、自分のために無料ツールを作った話

このサイトの記事は、いつも「当事者のお前へ」という形で書いてきた。今回は少し違う。今回は、私自身の話だ。
プロフィールにも書いているとおり、私は妻から離婚を切り出された当事者だ。そこからこのサイトを作り、立て直しの情報を書き続けてきた。その私が、いま再婚を考える段になっている。
そして決めていることが一つある。今度は、結婚の前にお金と将来の話をきちんとして、婚前契約書を作る。 前の結婚で何か揉めたわけじゃない。ただ、再婚は初婚と同じにはいかない。私には前の結婚の子どもがいて、教育費はこれからかかる。背負っているものが増えたぶん、お金の話を曖昧にしたまま進むのが怖くなった。
この記事は、その私が「どこで作ればいいのか」で止まり、探しても無かったから自分で作ってしまった、という話だ。そのツールは無料で公開している。同じところで止まっている人に届けたい。
まず結論:探しても無かったから、自分で作った。無料で置いてある
先に答えを言う。書面を作る場所なら、テンプレート・行政書士や弁護士・公証役場と、昔からある。無かったのはその手前、「二人で話し合う」を助けてくれる場所だ。
だから作った。「ふたりも」という無料ツールで、切り出しから話し合い、契約書の下書きまでを二人で進められる。この記事は、その経緯と使い方、そして口でどう切り出すかまでを書く。
婚前契約書は知っていた。でも「どこで作るか」で止まった
このサイトには 婚前契約書とは? という記事がある。制度・費用・効力は、書いた本人だからよく分かっている。
それでも、いざ自分が作る側になると、手が止まった。調べて出てくる選択肢は、だいたいこの3つだ。
- 無料テンプレートをダウンロードして、自分たちで作る(ほぼ0円)
- 行政書士や弁護士に作成を頼む(数万円〜)
- 公証役場で認証・公正証書にする(証拠力を上げたいとき)
どれも間違いじゃない。ただ、当事者として並べてみて気づいた。この3つは全部「書面を作る」道具であって、その手前を助けてくれない。
手前とは、こういうことだ。テンプレートを開いても、隣にいる相手と何をどの順番で話せばいいのかは書いていない。専門家に頼んでも、「ねえ、婚前契約作らない?」と切り出す瞬間は、代わりにやってくれない。そして正直なところ、いちばん難しいのはそこだった。書面じゃない。二人の話し合いのほうだ。
無いなら、作ることにした
私はWebとプロダクトの仕事を20年以上やってきた。欲しいものが無いとき、作るのは仕事の延長だ。
だから、自分のために作った。 名前は「ふたりも」。婚前契約書を、ふたりで作るためのツールだ。
無料で公開しているのは、恩着せがましい話ではなくて、このサイトと同じ動機だ。私が止まった場所で、同じように止まっている人が必ずいる。 離婚の初動で「順番を教えてくれる場所が無い」と思ってオレタチを作ったのと、まったく同じ理由で、これを作った。
「ふたりも」に入れたのは、私が欲しかったものだけだ
機能の一覧より、なぜそれを入れたかを書いたほうが伝わると思う。
- 同じ質問に、ふたりで別々に答える。 どこが合っていて、どこがずれているかが、そのまま画面に出る。ズレを「探す」のではなく「見える」ようにしたのは、口で確かめ合うと尋問みたいになるからだ
- 分野は5つ。ふたりの価値観・くらしの役割・お金・こども・もしもの備え。 軽い話から重い話へ進む並びにした。いきなりお金から入ると固くなることを、前の結婚で知っているからだ
- 話し終えると、契約書の下書きの形になる。 書面にするかどうかは、そのとき二人で決めればいい。作らないという結論でも、話せたことは残る
- 登録もログインも無し。書いた内容は、この端末から外に出ない。 夫婦のお金や将来の話を、どこかのサーバに預けたくないのは、私自身がそうだからだ
そして、これがいちばん大事なのだが、画面を二人で見ること自体が、切り出しになる。「こういうの見つけたんだけど、一緒にやってみない?」で始められる。自分の言葉で「契約」を説明しなくても、画面が代わりに話してくれる。
それでも口で切り出したい人へ:私が使える形まで削った一言
ツールに頼らず、自分の言葉で切り出したい人のために、そのまま使える形の一言も置いておく。切り出しの原則は一つだけだ。一言目に「契約」と言わない。頼むのは、話す時間だけ。
どれも共通しているのは3つ。疑いじゃなく、将来の話として出す。その場で答えを求めない。相手が断れる形にしておく。
再婚で、なおさら言い出しにくいとき
「前の結婚のこともあるし、今度はお金とか将来のこと、先にちゃんと話しておきたいんだ。」
私と同じ立場なら、これがいちばん強い。自分の事情から話し始めているから、相手を疑う話には聞こえない。過去は隠すより、先に出したほうが話が早い。
特にきっかけがないとき
「将来のお金のこととか、もしもの時のこと。一回ちゃんと、話す時間つくらない?」
ポイントは、「つくらない?」で終わっていることだ。頼んでいるのは時間だけ。その場で返事はいらない、が同時に伝わる。
友達の離婚話やニュースが出たとき
「この前、〔友達〕の話を聞いてさ。うちも先に決めとこうかな、と思って。」
(〔 〕は自分の状況に置き換える)
身近な出来事は、自然な入り口になる。ただし、他人の離婚話を長々と続けないこと。あくまで入り口で、主役は二人の話だ。
「私を疑ってるの?」と返されたとき
「疑ってるんじゃなくて、俺が安心したいんだ。決まってないことがあると、落ち着かなくなるタイプだから。」
否定から入らない。「疑ってない」と訂正しにいくと、話が「疑ったかどうか」の言い合いになる。自分の側の話に戻して、自分の弱さとして言う。
「そういうのはいい」と断られたとき
「分かった。書面はなしでいい。ただ、考えてることだけ聞いてほしい。」
引き下がっていい。 婚前契約を作らないという選択も、普通にある。ただ、書面は落としても、話し合いのほうだけは残す。一度流れても、二〜三週間おいて、別のきっかけからまた出せばいい。
逆に、言ってはいけない切り出し方(3つ)
- 「サインしてほしい書類があるんだけど」。紙から入る最悪の順番で、中身を聞く前に相手の顔が変わる
- 「親に、作っておけって言われてさ」。二人の話が、よその人からの要求に化ける
- 「浮気とかされたときのために、決めとこう」。最初の一言が疑いの宣言になる。「破ったらどうする」の話は、話し合いが深まってから二人で決めればいい
書面の作り方・費用・効力は、こっちにまとめてある
話し合いが進んで「で、書面はどうする?」となったら、そこから先は制度の話だ。
- 制度の全体像・費用・効力の違い → 婚前契約書とは?作り方・費用・効力
- 無料テンプレートで作っていいのか → 婚前契約書は、無料テンプレートで作っても大丈夫?
- 再婚・事実婚でも作れるのか → 事実婚や再婚でも、婚前契約は作れる?
一つだけ期限の話をしておくと、「これは自分の財産だ」と、あとから他人にまで言い切れる形(夫婦財産契約の登記)にするなら、婚姻届を出す前が期限だ[出典1]。先延ばしにすると、このやり方だけは選べなくなる。
まとめ:私は、先に話すほうを選んだ
離婚は、できればしないほうがいい経験だった。ただ、あの経験があるから、次は何を先に話しておくべきかが分かる。 婚前契約書は、それを形にする道具だ。疑いの道具じゃない。「あなたとの将来を、ちゃんと考えている」という、告白に近いものだと思っている。
- どこで作るか迷ったら、まず二人で話すところから。書面はその後でいい
- 話し合いの入り口には ふたりも(無料・登録不要)。私が欲しくて作ったものを、そのまま置いておく
- 口で切り出すなら、一言目に「契約」と言わない。頼むのは、話す時間だけ
- 断られたら引き下がる。作らない選択も、普通にある
話し合った結果「うちは書面までは作らない」でも、それでいい。二人でお金と将来の話ができた。 それだけで、紙が一枚あるより強い。私が欲しかったのは、たぶん紙じゃなくて、その時間のほうだった。
※もし今、まだ前の離婚の渦中にいるなら、この記事は後でいい。足元の順番はこちら → オレタチの初動ナビ
よくある質問
Q. 婚前契約書は、どこで作ればいいですか?
A. 大きく3つの道があります。①無料テンプレートやWebサービスで自分たちで作る(ほぼ0円)②行政書士・弁護士に作成を頼む(数万円〜)③公証役場で認証・公正証書にする(証拠力を上げたいとき)。どれを選ぶにしても、その前に「二人で中身を話し合う」工程が必ず要ります。この記事では、その話し合いから契約書の下書きまでを無料で進められるツール「ふたりも」を紹介しています。書面の効力・費用の比較は別記事「婚前契約書とは?」にまとめています。
Q. 婚前契約の話を、相手にどう切り出せばいいですか?
A. 一言目に「契約」と言わないのがコツです。頼むのは合意ではなく、話す時間だけ。「将来のお金のこととか、もしもの時のこと。一回ちゃんと、話す時間つくらない?」のように、その場で答えを求めない形にすると、相手が身構える理由がなくなります。契約書の話は、話し合いが進んでから出せば十分です。
Q. 「私を疑ってるの?」と返されたら、何と答えればいいですか?
A. 否定で返すより、自分の側の話に戻すのが効きます。「疑ってるんじゃなくて、俺が安心したいんだ。決まってないことがあると、落ち着かなくなるタイプだから」のように、主語を自分にして、自分の弱さとして伝えます。相手の受け取り方を訂正しようとすると、話が「疑ったかどうか」の言い合いになってしまいます。
Q. 「ふたりも」は本当に無料ですか?何か登録が必要ですか?
A. 無料で、登録もログインも不要です。このサイトの運営チームが、自分たちが欲しくて作った自社ツールで、広告や他社サービスへの誘導のために作ったものではありません。書いた内容はサーバに送られず、使っている端末の中に残る設計です。
Q. 婚前契約の話を切り出して、断られたらどうすればいいですか?
A. 引き下がって大丈夫です。婚前契約は作らないという選択も普通にあります。ただ、契約書を作らなくても「お金や、もしもの時のことを二人で話せた」こと自体に意味があります。「分かった。書面はなしでいい。ただ、考えてることだけ聞いてほしい」と、話し合いのほうだけ残すのがおすすめです。
この記事について(運営者・出典・ご注意)
- 運営:オレタチ編集部(運営者情報/編集方針)。本記事は、編集責任者自身の体験と、当事者として作った自社の無料ツール「ふたりも」の紹介を含みます。婚前契約を勧める趣旨ではなく、作らない選択も含めて、二人で将来を話し合うための入り口として扱っています。
- 出典一覧:本文の該当箇所に[出典n]で示しています。
- 民法(夫婦財産契約):755条(婚姻の届出前に別段の契約をしなければ法定財産制による)、756条(法定財産制と異なる契約は婚姻の届出までに登記しなければ承継人・第三者に対抗できない)。e-Gov法令検索「民法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 。2026-07-02確認(既存記事で確認済みの内容を再掲)
- ご注意:本記事は一般的な情報と編集者の体験にもとづく紹介です。実際に作る条項が有効か、登記や公正証書が必要か、費用がいくらかは、行政書士・弁護士・司法書士・公証役場でご確認ください。制度と費用の全体像は → 婚前契約書とは?。
本記事は婚前契約の作り方・話し合いの進め方に関する一般的な情報と、編集者自身の体験にもとづく紹介です。契約内容の有効性・作り方・費用・法的判断は、行政書士・弁護士・司法書士・公証役場にご確認ください。